CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?解説から実践に向けたポイント企業が商品やサービスを提供するうえで、顧客が得る体験はビジネス成果に直結する重要な要素です。CX(カスタマーエクスペリエンス)を最適化することで、顧客満足だけでなく、企業ブランドの向上や継続利用にも大きく寄与します。デジタル技術やSNSの発展に伴い、消費者が体験する情報や接点はこれまでになく多様性を増しています。そのため、一方向的な価値提供ではもはや差別化が困難です。本記事では、CXの基本的な概念から、具体的な企業事例、そして実践する際のポイントまでを幅広く解説します。B2CだけでなくB2Bにおいても求められるCX視点を踏まえ、企業戦略としての重要性を再確認していきます。CXの定義と基本概念CXとは、顧客が商品やサービスに触れるすべての体験を指し、認知から購入、利用、アフターサポートに至るまでの包括的なプロセスを含みます。単に機能面や価格面の顧客満足度(CS)だけでなく、感情的な満足やブランドへの愛着といった要素も大きく関わります。CXの向上を図るには、顧客視点を徹底的に踏まえたコミュニケーション設計や、適切なタイミングで情報を提供するOne-to-Oneマーケティングなどの多面的な施策が欠かせません。データドリブンなアプローチによる顧客理解と継続的な改善が求められる点も重要です。なぜ顧客体験が重要視されるのか顧客体験が企業ブランディングに与える影響は非常に大きく、一度失った顧客の信頼を取り戻すのは困難です。反対に、ポジティブな体験を重ねることでブランドに対する愛着が強まり、購買を繰り返してくれるリピーターにつながります。SNSの普及によって、顧客が体験した内容を瞬時に多くの人へ共有できるようになりました。専門家の評価や広告よりも、実際のユーザーによる口コミが信頼される傾向が強まっており、企業としては顧客体験の質を高めることが重要です。顧客は単に製品やサービスを買うだけではなく、得られる満足度や感情的価値に目を向ける傾向が強まっています。この点を踏まえて、企業はよりパーソナルで魅力的な体験を演出する必要があります。CXと顧客満足度(CS)の違いCSは製品やサービスの機能や性能に対する「満足」を測る指標として普及していますが、CXはその枠を越え、購買前後の心理的な印象やブランドとの関係性までも含めて考える概念です。たとえば、同じ商品を手にしたとしても、購買プロセスがスムーズで親切なカスタマーサポートが受けられるなど、顧客視点での好印象が積み重なれば、企業全体に対する評価が高まるという特徴があります。CXの向上施策は、結果的にCSの向上にもつながります。その為、重要なのは接点ごとの単発的な満足度だけでなく、一連の体験をどう最適化し、感情的価値を高めるかという点にあります。CXが注目される背景顧客行動や市場の構造が大きく変化し、企業にとって新たな戦略要素としてCXが注目されています。現代は情報が溢れ、顧客はいつでもどこでも商品やサービスに関するあらゆる情報を得られるようになりました。これまで一方向的に提供されてきた価値観は通用しにくくなり、企業は多種多様な顧客ニーズを的確に捉えなければなりません。デジタル技術に限らず、社会構造そのものが変化しており、従来のマーケティングモデルだけで勝負するのは難しくなっています。CXが注目される背景には、急速に進むデジタル化とともに、顧客自身が主体的に商品やサービスを評価・発信するようになったことがあります。デジタル技術の進化と顧客行動の変化PCやスマホ、タブレットの普及により、WebやSNSを中心として、顧客は常にオンラインに接続し、比較検討や情報収集を行います。購買行動は短時間で起きるようになり、企業としてはリアルタイムでの情報提供と対話が求められます。また、チャットボットやAI対応の問い合わせシステムなど、顧客とのタッチポイントは多様化し、スピーディーな対応が期待されます。オンラインとオフラインの垣根も曖昧になり、顧客はさまざまなチャネルを自在に行き来します。こうした変化に対応するためには、エンドユーザーが望む情報を適切なタイミングで提供し、常に快適な体験を維持することが重要であり、それがCX全体のレベルアップにつながります。CXと関連する用語・概念の違いCXと混同されやすい用語や概念の違いを把握することで、より明確な戦略が立てやすくなります。似たような略語や概念が多いマーケティング領域において、CXと他の用語をはっきり区別して説明できることは重要です。目的や考え方、適用範囲が異なる場合もあるため、それぞれの特徴を知っておくことで戦略全体の整合性が高まります。たとえば、顧客が実際に使う場面にはUXが密接に関わり、企業内部のデジタル化にはDXが影響します。それぞれの要素を正しい形で組み込み、一貫性のある顧客体験を提供することが、競争優位の獲得へつながります。UX(ユーザーエクスペリエンス)との違いUXは商品やサービスそのものの操作性や快適性など、ユーザーが直接触れる段階の体験に焦点を当てています。具体的には、アプリのUIデザインや使いやすさなどが該当します。一方、CXは購入前の情報収集やアフターフォローも含め、企業とのあらゆる接点での体験を重視します。したがって、UXはCXを構成する重要な要素の一つと言えますが、それ自体がCXの全体像をカバーするわけではありません。UXを向上させる施策を行うと、ユーザーの満足度や利用意欲が高まり、結果的にCXの向上にも寄与します。両概念は相互に連動し、優れた企業体験を作り上げます。DX(デジタルトランスフォーメーション)との関係DXは企業がIT技術を活用してビジネスモデルや組織体制を変革する取り組みを指します。その過程で顧客データを統合的に扱い、マーケティングオートメーションを導入するなど、顧客体験の質を高めるための基盤が整えられます。たとえば、購買履歴や問い合わせ履歴のデータを分析し、個々の顧客に合ったサービスを提案する仕組みがDXによって可能になります。ここで得られるパーソナライズの成果は、CX向上の大きな土台となります。DXが進むと、オフラインとオンラインの壁を越えたシームレスな顧客体験が実現し、企業間の差別化に大きく寄与します。つまり、DXはまさにCX戦略を支えるテクノロジーの要とも言えます。※DXに関する詳細は、こちらでも解説しておりますので、是非ご参照ください。CS(カスタマーサティスファクション)との住み分けCS(顧客満足)は企業の提供する商品やサービスに対して抱く“満足度”を示す概念ですが、CXはさらに広範な体験と顧客の感情を含みます。どちらも顧客と商品の関係を捉えるものですが、CXのほうがより包括的です。CSの場合、定量的なアンケートやスコアで把握できることが多いですが、CXは顧客の購買前後の印象やブランドへの好意度といった定性的な部分まで含まれるため、評価・分析が複雑になります。ただし、CSのスコアを適切に活用し、そこから見えてくる不満点をCXの改善に生かすなど、両概念を組み合わせることが顧客満足と企業成長の両立につながります。B2BでのCXの重要性顧客体験の重要性は、消費者向けのB2Cだけでなく、企業間取引のB2Bでも高まっています。従来、B2B取引は製品や価格、機能といった比較的定量的な要素が重視されるとされてきました。しかし近年は、意思決定者の多くが個人として成熟した消費者体験を日常で味わっており、それを企業間の取引にも期待する傾向があります。B2Bでも、人間同士の関係や信頼感が成立のカギを握ります。透明性の高い情報提供や迅速なサポート対応など、B2Cで求められる顧客体験の質が、B2Bでも大きな差別化要因になっています。企業間取引における顧客視点の変化社内の決裁者や担当者は、プライベートでの購買体験を通じて、常に快適なオンライン購入やスムーズなサポートを経験しています。結果として、ビジネスの場においても、同様の利便性や快適さを求める傾向が高まっています。この背景には、デジタル技術による効率化だけでなく、B2B取引自体がよりパーソナルなコミュニケーションを重視する流れがあります。企業間のやり取りであっても“顧客体験”を強く意識することが重要です。単純なスペック比較やコスト削減だけでは差別化が難しくなっており、“顧客がいかにストレスなく導入・活用できるか”という視点が取引継続のポイントになっています。担当者レベルでのロイヤルティ向上B2Bでも最終的な意思決定には人が関わっています。どれほど優れた製品やサービスを提供していても、担当者個人が抱く不満や使い勝手の悪さが解消されなければ、リピートや長期契約にはつながりにくいです。日常的に接するサポート担当や営業担当とのやり取りがスムーズであるほど、担当者の満足度は向上し、結果的に企業全体との関係性も深まります。これが後のロイヤルティへ直結します。担当者自身が高い満足感と評価を保持していれば、社内での購買提案や追加サービス導入においてもポジティブな影響をもたらし、契約拡大につながるケースが多く見られます。CX向上の成功事例当社で実施させていただいたCX向上の成功事例として、Adobe Commerceを利用したECサイト構築と、Adobe Experience Managerを利用した企業のブランドサイト開発を中心としたデジタルマーケティング基盤の導入がございます。これらの取り組みでCXの最適化を支援いたしました。CX向上が企業にもたらすメリットCXを重視することで、企業は多様なメリットを享受できます。魅力的な顧客体験を提供できる企業は、継続利用やリピート購入の割合が高まるため、長期にわたり安定的な収益基盤を築くことができます。また、ポジティブな口コミが広がり、広告費を削減しつつ新規顧客の獲得が可能になることも大きな魅力です。さらに、一人ひとりの顧客の満足度が高くなることで、価格競争にも巻き込まれにくくなります。高品質・高付加価値路線を打ち出せるようになり、企業としての存在感が強まります。ブランドファンの獲得と顧客離れ防止顧客は、単に商品を買って終わりではなく、“共感できるブランド”や“長く使いたいと思えるサービス”を求めています。CXを通じて企業独自の世界観やストーリーを伝えれば、ファン化した顧客がリピーターとして企業を支えてくれます。ポジティブな体験を得た顧客は離脱のリスクが低く、競合他社の似たようなサービスが登場しても、愛着のあるブランドから離れにくい特徴があります。結果として企業の安定的な成長を促します。ブランドファンの存在はマイナスな情報が出た場合でも、企業を擁護したりサポートしたりしてくれる点があり、企業イメージのダメージを最小限に抑えることにも寄与します。CX向上のためのポイントとアプローチ効率的にCXを高めるには、戦略的なアプローチや組織体制が求められます。企業がCXを向上させるためには、顧客データの正確な把握と分析が重要な起点となります。データをもとに顧客の行動や嗜好を理解し、その洞察を施策に反映することで実効性のあるアプローチが可能になります。加えて、全社的な協力体制や柔軟な組織デザインも欠かせません。顧客との接点を持つ部門だけが奮闘しても、根本的な改善には限界があります。経営層のリーダーシップや他部門との連携が結果を左右する大きな要因です。SIerパートナー選定のポイントCX向上には、システム導入や運用面でサポートしてくれる信頼できるパートナーが欠かせません。特に顧客データの統合や分析基盤の構築は専門知識を必要とし、経験豊富なSIerとの連携がスムーズな運用を実現します。パートナー選定では、業界特化の実績やコストだけでなく、共に課題を解決していこうとする姿勢やコミュニケーション力も重視すると良いでしょう。また、長期的な目線でパートナーシップを構築することで、時代の変化に応じてシステムや施策を柔軟にアップデートできる体制をつくり上げることが可能です。組織全体で取り組む重要性CX改善はマーケティング部門やカスタマーサポート部門だけの仕事ではありません。顧客が接するすべてのタッチポイントで共通のビジョンを持ち、連携できる体制を構築する必要があります。業務フローとITシステムが切り離されていたり、部門間で顧客情報が共有されていなかったりすると、顧客に一貫性のない体験を与えてしまいます。結果としてブランドイメージを損ねる恐れもあります。そこで、経営層を含む全社的な合意形成と、顧客目線で仕事の進め方やシステム連携を見直す取り組みが重要です。デジタルカスタマーエクスペリエンス(DCX)とはオンラインチャネルの普及から、デジタル化した顧客体験であるDCXの重要性も増しています。DCXとは、Webサイトやモバイルアプリ、SNSなどデジタル上で体験する顧客接点を中心に最適化し、使用感や利便性を高める取り組みです。近年、ほとんどの顧客がオンラインを主要な情報源とするため、企業としてはこの領域での差別化が急務となっています。オフラインの店舗や対面での接客から、オンライン上のサポートデスクやチャットボットへの移行は顧客に利便性を提供するだけでなく、企業にとっても人件費削減やデータ収集の効率化などのメリットがあります。オンラインチャネル活用で生まれる新たな顧客体験オンラインチャネルは地理的制約を受けず、顧客が24時間いつでも企業や製品情報にアクセスできるメリットがあります。リアルタイムのチャットボットや動画説明によって、対面以上の納得感を提供できる場合もあります。また、顧客側のデバイス利用状況や行動データを分析し、タイムリーにニーズを汲み取ることで、オフラインでは難しかったきめ細かなサポートや提案が実現します。オンラインとオフラインをしっかり連動させることで、あらゆるチャネルで統一感のある体験を作り上げることがDCXの鍵となります。従来型顧客体験との違いと相乗効果従来型の顧客体験では、店舗や対面での接触が主なタッチポイントでしたが、DCXの導入によって顧客はオンライン上でも同等以上に快適なサポートや商品探索を行えます。ただし、これらは対立する概念ではなく、オフラインでの丁寧な接客がオンラインでのフォローに繋がるなど、相乗効果を生み出すことが大切です。企業が顧客の利便性を最優先に考え、一貫したメッセージやサービス品質を提供することで、DCXと従来型の体験が融合し、より強固なブランド価値が形成されます。まとめ・総括最後に各ポイントを再整理し、企業戦略としてのCXへの取り組みを振り返ります。CXの向上は企業にとって競合優位性を築く大きなチャンスです。デジタル技術の進化や顧客行動の多様化により、一貫した体験価値の提供は難易度が高まる一方、実現すれば高いロイヤルティとブランド力を獲得できます。B2BでもCXが重要視される現状では、組織全体で顧客目線に立ち、データ活用やプロセス改善を行うことが求められます。NPSなどの指標を活用して効果測定を行い、細やかな改善を積み重ねることが不可欠です。オンライン・オフラインを問わず、一貫して高い顧客体験を提供することが、これからの時代の企業成長を大きく左右する要因となるでしょう。日本システム技術株式会社(JAST)における導入事例当社では、Adobeソリューションプログラムのブロンズパートナーとして、Adobe CommerceやAdobe Experience Managerを活用したCXの最適化をご支援します。当社の技術領域※Adobeソリューションプログラムパートナー